精神疾患があると思われる方への対応は?
A:できる限り通常の相談と同様に対応し、相談者の話を直ちに否定しないようにする。そのうえで客観的な資料の有無を確認し、相談者の認識は認識として、客観的資料がなければ相談者の請求・主張が認められないことは、はっきりと丁寧に説明する。 あくまでも通常の相談と同様に、事実関係を確認し、その有無を客観的な資料に基づき認定したうえで、法律的に相談者の請求ないしは主張が認められるか否かを判断して回答する。 相談者の話を直ちに否定するようなことはせず、客観的な資料の有無を前提とした法的見解を示しつつ、認められるものは認められると回答し、認められないものは認められないと回答する。 丁寧に話を聴き、客観的な根拠に基づいて説明をすれば、幻聴・幻覚が疑われる相談者であっても、理解を得られることは少なくない。 なお、幻覚·幻聴が疑われる相談者から依頼があった場合、幻覚・幻聴が疑われるとの理由のみで依頼を断ることは正しいこととはいえないが、依頼内容を実現できる可能性がない場合や、相談者とコミュニケーションをとることが困難であるといった場合には、その旨をきちんと伝え、依頼を断ることも必要である。 (木村悠·狩倉博之)
「若手弁護士が法律相談で困ったら開く本 」狩倉博之 2023年
ISBN 9784313512108 C2032
本人以外から相談があった場合の注意点は?
A:本人との関係及び本人が相談に来られない理由を確認する。その際、本人と来所した人物の利害が対立していないかには注意が必要である。回答にあたっては、本人から聴取できていないことを前提とするものであることを明確にして、端的に行う。 法律相談に来た者と本人がどのような関係にあるか、本人が相談に来られず、本人ではない者が相談に来た理由を確認する。本人が病気等で相談に来ることが困難であり、やもを得ず近しv親族が相談に来ているといった場合には、来所した者との間で相談を行うことは不合理とはいえない。 他方で、本人が相談に来ることができない合理的な理由がないにもかかわらず、また、親族ではない者が相談に来ているような場合には、例えば、「弁護士が○○と言っていたので、○○をしろ」といったように、自身の主張・要求に本人を従わせるといった目的に相談を利用しようとしている場合もありうる。特に、本人と利害が対立する者の場合には、そのような危険性が高いので、本人と利害が対立している者からの相談には注意を払うとともに、相談を行う場合には,その者自身の相談として相談を受けることが適切である。 なお、相談に来た者が本人と利害対立がなく、相談を受けることに問題がない場合であっても、他人を介することで事実関係を正確に把握できないことがあるため、相談にあたっては、あくまでも本人ではない者から聴取した事実を前提にしており、前提となる事実が変われば結論も変わりうることを十分に説明しておく。また、本人に相談内容を伝える際に誤りが生じないよう、結論は端的にわかりやすく述べるようにし、可能であれば本人自身が相談の機会を持っよう勧めるようにする。 (木村 悠・狩倉博之)
「若手弁護士が法律相談で困ったら開く本 」狩倉博之 2023年
ISBN 9784313512108 C2032
弁護士に依頼済みの方から法律相談を求められたら?
A:現に依頼している弁護士を批判する発言、解任を促す発言は厳禁である。相談者の話を前提とした一般的な回答にとどめ、依頼している弁護士の処理に疑問がある場合には、依頼している弁護士に直接確認するよう助言する。 弁護士は、他の弁護士との関係において相互に名誉と信義を重んじ(職務規程70条)、信義に反し、他の弁護士を不利益に陥れてはならない(同規程71条)。また、他の弁護士が受任している案件に不当に介入してはならない(同規程72条)。 よって、他の弁護士の案件処理を批判したり、解任を勧めたりすることはしてはならない。 相談者に対しては、他の弁護士が受任していることから、案件に不当に介入することにならないよう、相談者の話す事実を前提とした一般的な回答とならざるを得ない旨を伝え、了解を得たうえで、「相談者から聴取した事実を前提とする限り」といった留保を付した回答をすることが適当である。 また、依頼している弁護士の案件処理に疑問があるようであれば、依頼している弁護士に直接確認するように助言するべきである。 (木村悠·狩倉博之)
「若手弁護士が法律相談で困ったら開く本 」狩倉博之 2023年
ISBN 9784313512108 C2032
相談中に利益相反が判明したら?
A:利益相反が判明した時点で直ちに相談を中止する。 中止するにあたり、相談者に誤解を与えないよう適切な説明が必要である、 (I)法律相談の中止 弁護士は、 依頼を受けて受任した案件との間に利益相反が認められる案件等について職務を行ってはならない(弁護士法25条、職務規程27条 ・28条)。法律相談中に利益相反が判明した場合、弁護士は当該相談に関する案件の依頼を受けることができないことは当然として、相談を行うこと自体が、受任している案件の依頼者の利益を害し、 職務に対する信頼を害する危険性が高いことから、利益相反の事実が判明した時点で 直ちに相談を中止するべきである。 (2)相談者に対する説明等 相談者に対しては、利益相反が認められることを伝え、相談を行えないことを説明するとともに、 途中まで聴いた事実については守秘義務を負うこと(弁妻士法23条、職務規程23条) も説明し、無用な誤解を与えないようにする。 なお、相談内容及び事実関係について多くを聴いてしまった場合、その程度によっては、受任している案件について職務を継続してもよいのかを検討しなければならなくなる場合がある。 でのような事態に陥らないためには、相談を始める前に相談者の氏名をきちんと確認すること、いきなり事実関係を詳細に聴くのではなく、まずは相談の大枠を癒き、相手方や関係者の氏名を確認した後に細かな事情を聴いていくなど、相談の初期段階で利益相反が認められないかを確認する工夫が望まれる。 (井上志穗・ 狩倉博之)
「若手弁護士が法律相談で困ったら開く本 」狩倉博之 2023年
ISBN 9784313512108 C2032
「相談を録音したい」と言われたら?
A:基本的には担当する弁護士の判断によるが、録音されることにはリスクがある。また、一般的な説明にとどめざるを得なくなりがちとなるため、相談者の利益の点からも断って構わない。 相談所が録音を禁止している場合は、その旨を説明して断る。绿音が禁止されていない場合、録音を認めるか否かは、基本的には法律相談を担当する弁護士の判断による。相談者においては、重要なことを閉き漏らした場合や回答を誤解していないかを確認する場合に緑音しておくメリットがあり、断る際には配慮が必要ではある。 他方で、回答が録音されると、録音の一部だけが都合よく利用され、後日、トラブルとなるリスクがあるため、どうしても回答は一般的・抽象的なものになりがちである。 そのため、相談者において実質的・具体的な回答を得られなくなりかねない面があるので、相談者のデメリットを説明するなどして、録音を断っても構わない。 録音を断る場合には、重要なポイントを相談の最後に整理し、相談者に確認して、メモを取ってもらうなどして、 録音に代わる記録方法を工夫する必要がある。 なる、 秘術録音されている可能性があるため、録音の申出がない場合でも、常に録者されているかもしれないことは念頭におき、回答の仕方や表現には、日頃から十分に注意しておく必要がある。 (井上志穗・狩倉博之)
「若手弁護士が法律相談で困ったら開く本 」狩倉博之 2023年
ISBN 9784313512108 C2032
「相手方との会話を黙って録音してもよいか」 と間かれたら?
A:秘密録音がー般的に禁止されるわけではなく、 当然には証拠能力を否定されないが、 その証拠価値は相手方に告知して録音した場合よりも低く評価される可能性がある。 また、録音の手段・方法が著しく反社会的と認められる場合には証拠能力を否定され、程度によっては慰謝料を請求されかねない。 録音の目的・態様・利用方法等には注意が必要であることは指摘しておくべきてある。 「盗聴」は、会話の両当事者に知られることなく、また、両当事者の同意を得ることなく会話の内容を録音することで、違法であるが、自分自身と相手方との交渉過程や会話の内容を相手方に無断で録音することは、それ自体が法に触れるということはない。よって、相談者が自分自身と相手方との会話を黙って録音すること自体が、直ちに違法となるわけではない。 録音を裁判の証拠とする場合、「その証拠が、著しく反社会的な手段を用いて人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたものであるときは、 それ自体違法の評価を受け、その証拠能力を否定されてもやむを得ない」 (東京高判昭和52年7月15日判時867号60頁) とされており、 録音の日的及び手段・方法によっては、 裁判において録音の証拠能力が否定される場合がある。 他方で、 反社会的とまではいえない場合、 直ちに証拠能力が否定きれるわけではないが、相手方が知らず、その同意を得ていない録音であることから、同意を得た録音に比ペ、 その証拠価値は減殺されうる。 なお、録音の手段・方法等が反社会的と評価された場合、 証拠能力を欠くことに加え、人格権侵害により感謝料を請求される可能性があるので、録音の目的・態様・利用方法等には注意が必要であることは指摘しておくべきである。 (井上志穗・狩會博之)
「若手弁護士が法律相談で困ったら開く本 」狩倉博之 2023年
ISBN 9784313512108 C2032
「弁護士費用を相手方に請求したい」と言われたら?
A:弁護土費用は敗訴者が負担する訴訟費用にはあたらず、原則として体頼した本人の負担となるが、損害賠償請求に関しては、判決で損害額の10%程度が弁護士費用に相当する損害として、賠償金請求が認められることがある。 奔護士に交渉や訴訟等を依頼した場合、着手金、報酬金及び法律相談料といった弁護士費用を負担することになるが、代理人の選任は法律上強制されておらず、弁護士に法律相談するか否か、代理人を選任するか否かは当事者の自由であることから、弁護士費用は敗訴者が負担する訴訟費用にはあたらず、本人の負担となるのが原則である。よって、当然には相手方に負担るせることはできない。 相談者においては、弁護士費用が訴訟費用に含まれ、相手方の負担となると誤解している場合があるので、弁護士費用は敗訴者が負担する訴訟費用には含まれないことを説明しておく必要がある。 これに対し、交通事故等の不法行為及び使用者の安全配慮義務違反による債務不履行に基づく損害賠償請求においては、訴訟手続を弁護士に委任した場合に、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸投の事情を斟酌して、相当と認められる額の範囲内のものに限り、不法行為ないしは債務不履行と相当因果関係に立つ損害にあたるとされており (最判昭和的年2 月27日民集23卷2 号441員、最判平成24年 2 月24日 集民240号111頁)、一般的には、 認定された損害額の10%程度の額が弁護上費用に相当する損害として、賠償請求が認められている。 よって、交通事散の被害者及び労災事故の被災者等は、勝訴した場合には、同訴訟における弁護士費用 (の一部) を相手方に負担させることができる場合がある。 (井上态穗・狩倉博之)
「若手弁護士が法律相談で困ったら開く本 」狩倉博之 2023年
ISBN 9784313512108 C2032
相談終了後 回答が間違っていたことに気づいたら?
A:連絡先がわか る限りは、できるだけ早期に相談者に連絡をとり回答を訂正する。 間違った回答をすることはあってはならないことではあるが、 時間に限りがあるなかで、 事実関係を聴取して回答しなければならないことから、相談後に間違いに気づくことがないとはいえない。 事務所における相談や弁護士会が実施している相談のように、 相談者の連絡先がわかる場合には、 直ちに連絡をとり、 間違った点を訂正するべきである。 自治体が実施している相談の場合でも、 自治体を通じて連絡先がわかるようであれば、 同様に訂正するべきである。 連絡先がわからない場合は訂正のしようがないが、 まずは、 できる限り訂正の機会を持つよう努力するべきである。 また、 相談時間に限りがあることから、 確実に正確な回答が出せない可能性は常にあるので、 日頃から「事実関係次第で結論が変わる可能性がある」 「法令や裁判例を精査しないと確実なことは言えない」 といったように、回答に条件や留保を付しておくように心がけることである。 特に、 後日、 相談者と連絡をとることができない相談の場合には、 確定的なことは言わず、 必要に応じて他でも相談を受けることを勧めておくといったことが必要である。 (井上志穂•狩倉之之
「若手弁護士が法律相談で困ったら開く本 」狩倉博之 2023年
ISBN 9784313512108 C2032
