リフォーム工事

公開:2025/12/12

Q: 父は亡くなる直前に自宅のリフォームを行いました。相続税の申告に影響はありますか。 A: 固定資産税評価額に影響するようなリフォームを行った場合、相続税の申告に用いる家屋の価額は、リフォーム前の家屋の固定資産税評価額に、リフォームの金額に一定の計算式を用いて求めた価額を加算した額とします。 解説 相続税の申告で用いる家屋の価額は、その固定資産税評価額によります(評基通89)。 リフォームされた建物の固定資産税評価額が、リフォーム後の状況に応じた固定資産税評価額に見直されている場合には、通常の家屋と同様に固定資産税評価額を使うことが可能です。しかし、相続開始直前にリフォームが行われた場合は、リフォーム前の固定資産税評価額のままであるため、リフォーム前の固定資産税評価額をそのまま使うことはできません。 なお、リフォームが建物の経年劣化などを修繕し原状回復するためのものである場合には、固定資産税評価額に影響を与えないと考えられます。 (1) 増改築等に係る固定資産税評価額が付されていない場合の評価 増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない場合の家屋の価額は、増改築等に係る部分以外の部分に対応する固定資産税評価額に、その増改築等に係る部分の再建築価額「から課税時期までの間における償却費相当額を控除した価額の100分の70に相当する金額を加算した価額に基づき評価します。 償却費相当額は、再建築価額からその価額に0.1を乗じて計算した金額を控除した価額に、その家屋の耐用年数のうちに占める経過年数の割合を乗じて計算します。。 なお、相続税の申告期限までに増改築等後の固定資産税評価額が決定された場合には、増改築等後の固定資産税評価額で評価することができます。 (2) リフォームを行った建物の具体的な計算方法 【算式】 リフォーム後の家屋の価額 =リフォーム前の固定資産税評価額+(再建築価額-減価償却費相当額(※))×70% (※) 減価償却費相当額の計算 減価償却費相当額=再建築価額×0.9×リフォーム後の建物の耐用年数 経過年数(※) (※) リフォーム後の経過年数は、リフォーム完了から相続の開始時期までの期間に相当する年数(1年未満の端数があるときは、その端数を切り上げます。)をいいます。 (3) リフォームの工事中に相続が開始した場合の評価方法 リフォームの工事中に相続が開始した場合の評価方法については、「課税時期において現に建築中の家屋の価額は、その家屋の費用現価の100分の70に相当する金額によって評価する。」(評基通91)とされていることから、次のような算式で計算することができます。 また、相続開始時においてリフォーム中のとき、建築業者への支払が完済されておらず、リフォームの進行度合いと実際の支払額が異なることが一般的です。次の算式によるリフォーム費用現価×70%の額が、実際の支払額よりも多い場合の差額については債務(未払金)、少ない場合の差額については資産(前払金)に計上します。 ① リフォーム工事中に相続が開始した家屋の具体的な計算方法 【算式】 リフォーム中の家屋の価額 =リフォーム前の固定資産税評価額+リフォーム費用現価(※)×70% (※) ここでいうリフォーム費用現価とは、リフォームの建築の進行に応じた建築費用の額のことをいい、この額は建築業者への支払金額ではなく、建築の進行に応じた費用現価相当額です。 ② リフォーム費用現価の計算例 リフォーム建築契約の総額1,000万円、リフォーム工事の進行度合い80%とした場合のリフォーム費用現価は,800万円 (=1,000万円×80%)となります。 なお、相続開始時における工事進行度合いは建築業者に確認します。 ③ リフォームの進行度合いと支払額が異なる場合の相続財産への計上例 上記②の事例において、工事代金として、先に400万円又は800万円を支払っている場合、次の差額を相続財産として計上します。 イ 400万円支払済の場合 未払金160万円(=400万円-560万円(800万円×70%)) を負債計上します。 ロ 800万円支払済の場合 前払金240万円(=800万円-560万円(800万円×70%))を財産計上します。

Q&A 弁護士のための相続税務70

上場株式の評価

公開:2025/12/12

Q: 私は会社経営の傍ら株取引を行っています。高齢となってきたため。 一度、私が所有する株式の相続税の評価を行ってみたいと思います。 A: 上場株式の相続税評価額は、原則として、①相続開始日の最終価格,② 相続開始日の属する月の最終価格の月平均額、③相続開始日の属する月の前月 の最終価格の月平均額,④相続開始日の属する月の前々月の最終価格の月平均 額の四つの価格の中で、最も低い価格により評価します。なお、相続開始日前 後に株式の割当て・無償交付・配当金交付(以下「株式の割当て等」といいま す。)が行われる場合には、一定の調整計算を行います。 解説 (1) 上場株式の相続税評価 ① 相続税評価額 上場株式とは、金融商品取引所に上場されている株式をいいます(評基通181(1))。上場株式の相続税評価額は、次の四つの価格の中で最も低い価格をその評価額とします (評基通169(1))。 ・相続開始日の最終価格 ・相続開始日の属する月の最終価格の月平均額 ・相続開始日の属する月の前月の最終価格の月平均額 ・相続開始日の属する月の前々月の最終価格の月平均額 ② 取引所の選択 評価を行う上場株式銘柄が2以上の金融商品取引所に上場されている場合は、納税義務者が選択した金融商品取引所が公表する価格により、その上場株式の評価を行うことができます (評基通169(1))。 ただし、複数の金融商品取引所に上場されており、「課税時期の最終価格」及び「最終価格の月平均額」がある取引所と、取引数が少ない等の理由によりこれらの価格がない取引所がある場合には、これらの価格がない取引所を選択することはできません。 ③ 相続開始日に最終価格がない場合 相続開始日が休日等で取引がない、休日等でないものの株式の取引がなかったことにより相続開始日に最終価格がない場合は、原則として、相続開始日の前日以前又は翌日以後の最終価格のうち、相続開始日に最も近い日の最終価格により評価します。なお、3連休の中日のように相続開始日に最も近い日の最終価格が2ある場合には、その平均額により評価します (評基通171(1))。 ④ 相続開始日前後に株式の割当て等がある場合の調整計算 相続開始日の前後で、株式の割当て・無償交付・配当金交付が行われる上場株式の銘柄については、その評価額について一定の調整計算を行います。 ⑤ 証券会社から交付される参考価格情報 相続税申告のために証券会社に対し残高証明書の交付を請求すると、併せて相続開始日の終値や相続開始日の属する月の終値平均などを記載した参考価格情報の提供を受ける場合があります。この参考価格情報については、上記②の複数の金融商品取引所に上場している場合の取扱い、上記④の株式の割当て等がある場合の調整計算が考慮されていないものも散見されます。 実務上は、会社四季報等で、上場している金融商品取引所,株式の割当て等の有無を確認し、これらに該当する場合には、参考価格情報を発行する証券会社に対し、これらの調整計算が行われているか確認する必要があります。 (2) 海外上場株式・ETFの評価 海外上場株式・ETFについても、上場株式の評価に準じて評価を行います(評基通5-2,199(注))。

Q&A 弁護士のための相続税務70

非上場株式の評価

公開:2025/12/12

Q: 遺産分割において、非上場株式を相続する後継者とそれ以外の相続人との間で株式の評価について意見が対立しています。後継者は相続税評価額により遺産分割すべきと主張していますが、他の相続人は時価評価額により遺産分割すべきと主張しています。 A: 遺産分割における非上場株式の評価は、相続税申告における財産評価基本通達に定められた評価方法により算定された相続税評価額によることもありますが、それはあくまで税務上の株式の評価額であり、遺産分割における利害対立の解決を目的とするものではありません。 遺産分割において相続人の間で利害が対立した場合や遺留分侵害額を算定する場 合においては、時価評価額により株式を評価することとなります。時価評価額については明確に定められた評価方法はありません。当事者双方の合意が得られた評価額が時価評価額となります。また、当事者双方の合意が得られない場合で最終的に裁判所による鑑定手続を利用したときは、通常は鑑定評価額が時価評価額となります。 解説 非上場会社とは、証券取引所に上場していない会社をいい、その会社の株式は主に経営のために支配することを目的として所有され、そのほとんどは譲渡制限を設けています。そのため、証券取引所において取引価格が形成されている上場株式と異なり、取引価格が存在しないことから、株式を評価する目的等の違いによって評価方法が異なり、それにより算定される時価評価額も変わります。 評価方法は大きく二つに分類されます。一つは、財産評価基本通達の定めによる取引相場のない株式の評価(以下「国税庁方式」といいます。)で、もう一つは、日本公認会計士協会の公表している「企業価値評価ガイドライン」を指針とする企業価値評価(以下「バリュエーション」といいます。)です。 (1) 適正な時価による非上場株式の評価方法 非上場会社の株主は、主に会社の経営に支配的影響力を持つ支配株主と、それ以外の少数株主によって構成されています。 支配株主は親族で経営する同族株主である場合が多いことから、同族株主間における株式の譲渡は、譲渡価額に経済合理性が働きにくく、課税に弊害をきたすおそれのある取引となる可能性が高くなります。 そのため、国税庁は、納税者間の適正・公平な課税を行う観点から、財産評価基本通達の定めにより画一的に評価することで、評価の客観性や安全性を確保した時価により株価を算定します (国税庁方式)。 一方、第三者間における株式の譲渡は、譲渡価額に経済合理性が働いて適正な取引になることから、課税に弊害をきたすおそれがないため、株価の算定において定められたルールというものはありません。 しかし、上場会社等では株主や出資者への説明責任を果たすため、日本公認会計士協会の「企業価値評価ガイドライン」を指針として、評価会社の企業価値について個別具体的な経済事情を織り込みながら合理的な評価方法を比較・検討することにより最終的な株価を算定します(バリュエーション)。 (2) 国税庁方式による株式の評価方法 相続、遺贈又は贈与により取得した非上場株式は、財産評価基本通達178~189の定めにある国税庁方式により株価を算定します。 国税庁方式による株価の算定は、課税が目的であることから、財産評価基本通達により画一的に評価が行われ、納税者が不利にならないように評価の安全性を確保するため、一般的に通常の取引価額よりも低い評価額になるように計算方式が定められているとされています。 したがって、遺産分割における利害対立の解決や遺留分侵害額を算定する場合においては、必ずしも適切な時価とはなりません。 なお、国税庁方式による具体的な評価方法については、以下のとおりです。 (3) バリュエーションによる株式の評価方法 日本公認会計士協会の公表している「企業価値評価ガイドライン」による株価の算定は、第三者間における株式譲渡や株式交換、利害関係の対立の解決を目的として適正な時価となるように株価を算定します。 バリュエーションによる評価方法は下記のような複数の評価方法を比較・検討した上で合理的な評価方法を選択したり、それぞれの評価結果を一定の割合で折衷したりすることにより最終的な株価を決定します。 なお、算定者により評価における前提条件や評価方法の選択などが異なり算定結果も異なることから、評価の客観性に欠けるため、税務上の株式の評価では採用されないことが通例です。 遺産分割において相続人の間で利害が対立した場合や遺留分侵害額を算定する場合においては、課税上弊害がない限り、当事者双方の合意が得られた評価額が時価評価額となります。この場合、必ずしも上記のバリュエーションによる評価である必要はなく、国税庁方式で合意しても構いません。 また、遺産分割調停や遺産分割審判に際して非上場株式の評価が必要となった場合、裁判所の鑑定手続を利用することができます。 裁判所による鑑定は、一般的に鑑定に先立ち、鑑定結果には互いに異議を述 べない旨の合意をした上で、裁判所が選任した鑑定人が相続人から提出された会計資料をもとに評価を行います。 鑑定人による評価は、主にバリュエーションによる評価をもとに、裁判所の裁量により株価を決定します。 (4) 株式の評価方法が争われた最近の裁判例(仙台薬局事件) ① 前提事実 被相続人は、亡くなる直前に第三者の企業に対して売却・資本提携等を前提に、自らが代表取締役を務める会社の株式譲渡について譲渡予定価格により譲渡する旨の基本合意書を締結しました。被相続人の相続開始後、相続人(原告ら)は、相続税申告前に第三者の企業と合意のあった譲渡予定価格で株式を譲渡しました。 ② 課税の経緯 本件は、相続人である原告らが、国税庁方式により 「大会社」として類似業種比準価額で株式を評価して相続税申告を行ったところ、所轄税務署長から、相続人が株式を譲渡した価額と国税庁方式による通達評価額との間に大きな乖離があり、財産評価基本通達の定めにより評価することが著しく不適当であるとして財産評価基本通達総則6項(後記62(3)参照)に基づき、財産評価基本通達の定める類似業種比準価額とは異なる株式価値の算定報告額(国が上記の株式について専門家に評価を依頼して算出したもの)に基づいて評価すべきとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから、原告らがこれら処分の取消しを求めた事案です。 ③ 第一審判決の要旨等 東京地裁は、令和4年の最高裁判決に基づき、通達評価額と算定報告額との間に大きな乖離があることのみをもって直ちに、財産評価基本通達の定めによる画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき特段の事情があるとはいえないとした上で、相続人による本件株式の売却は、評価額の差異を利用する相続税の租税回避を目的としたものではないことから、他の納税者と比較して看過しがたい不均衡があるということは困難と判断し、国の賦課決定処分を取り消しました。 国は、第一審判決を不服として控訴しました。 ④ 第二審判決の要旨 東京高裁は、一審に続いて総則6項の適用を認めず、以下の理由によって国の控訴を棄却しました。 イ 租税負担の公平性 取引相場のない株式の売買代金は、とりわけ、M&Aが行われる場合においては、高度な経営判断や双方の交渉の結果等により決定されるものであって、専門的評価による株式の交換価値を必ずしも反映しているとは限らない。 このことは、結果的に、専門的評価により交換価値と評価通達180に定める類似業種比準価額とのかい離の程度が著しいと判定された場合においても変わらない。したがって、譲渡予定価格と算定報告額が比較的近く,通達評価額と大きくかい離しているからといって、譲渡予定価格が交換価値を反映したものであるとして、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき特段の事情が存在していたということにはならない。 ロ 売買契約の成立及び売買代金債権への転嫁の蓋然性 控訴人は、取引相場のない株式について、売買契約が成立し、その所有権が買主に移転する前に、当該株式の所有者である売主が死亡した場合、売主の相続財産は売買代金債権になり、その価額は原則として売買相金額で評価される(最高裁昭和56年(行ツ) 第89号同61年12月5日第二小法廷判決・訟務月報33巻8号2149頁参照)とした上で、相続開始時に売買契約が成立に至っていなかったとしても、近い将来売買契約が成立し、売買代金債権に転化する蓋然性が高い場合、株式の交換価値が現実的に実現する蓋然性が高いものとして、売買代金相当額が 株式の交換価値としての一つの基準となり得ると主張する。 しかし、上記最高裁判決は、農地の売買契約が成立し、代金の相当部分の履行があったという場合において、農地法所定の要件が具備される前であっても、相続財産は売買残代金債権である旨判断したものであって、本件のように、売買契約が未だ成立していない場合とは明らかに状況を異にするというべきである。売買契約が未だ成立していない状況下において上記のような蓋然性を判断するためには、種々の事情を考慮する必要があり、そのような不明確な基準によることは不適切であるといわざるを得ない。したがって、近い将来における売買契約の成立及び売買代金債権への転嫁の蓋然性の程度を基準にすることは適切でない。 ハ 納税者間の不公平についての認定 最高裁令和4年判決は、評価通達6項の適用の有無に当たり、被相続人が、相続税の負担を減じ又は免れさせる行為をしたことを考慮しているところ、本件において、被相続人及び相続人らによるこれに類する行為があったとは認め難い。 そして、譲渡予定価格が、その時点で相続が発生した場合における評価通達180による評価額を大きく上回るものであったことは、本件の経過に照らして明らかであるから、本件基本合意は、本件被相続人の生存中に売買契約が成立した場合、代金債権に転化し、又は代金が支払われることによって、相続税の負担を増大させる可能性を有するものであり、相続税の負担を減じ、又は免れさせるという効果は存しないことから、他の納税者との関係で不公平であると判断する余地はない。 ⑤ 判決の確定 第二審判決の結果、国は上告を断念し、判決が確定しました。

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不動産小口化商品の課税関係

公開:2025/12/12

不動産小口化商品 相続税対策の一つとして、不動産小口化商品が注目を集めています。 不動産小口化商品とは、不動産への出資を募り不動産の売買や賃貸等を行い、その収益を分配する事業者について、業務の適正な運営の確保と投資家の利益の保護を目的として制定された不動産特定共同事業法によるものです。平成25年法改正により倒産隔離型スキームが導入され、平成29年法改正により小規模不動産特定共同事業が創設されました。 不動産小口化商品は、不動産特定共同事業法の許可を受けた事業者が提供するもので、大きく「任意組合型」と「匿名組合型」とに分かれます。 「任意組合型」の不動産小口化商品は、投資家が不動産特定共同事業者と民法上の組合契約を交わし組合を組成し、その組合が出資により取得した不動産を賃貸等によって運用し、その収益を投資家に分配するという仕組みの商品です。不動産の所有権は、組合員である投資家及び不動産特定共同事業者に帰属します。よって、組合に生じた損益は直接組合員に帰属し、所得税の課税上は、現物の不動産を所有している場合と同様に、不動産所得となります。また、相続や贈与を行う際の評価は、不動産の評価となるため、相続税・贈与税の節税効果は大きいといえます。 「匿名組合型」は、不動産特定共同事業者が投資家と匿名組合契約を交わし出資を受け、事業者は事業によって得た収益を投資家に分配するという形態の商品です。最近は、不動産クラウドファンディング又は不動産STとしても販売されています。投資家の出資金は事業者の財産となることから、事業者がその出資金により取得した不動産は事業者の所有となり、投資家は第三者に対して権利義務を持たず、その収益に対する所得税の課税上の取扱いは事業所得又は雑所得となります。また、匿名組合型は、相続や贈与を行う際の評価として、不動産の評価を使うことはできません。 任意組合型の課税関係 ① 組合に生じた損益(所得税) 任意組合型における投資家に分配される収益の課税関係は、パススルー課税が適用され(所基通36・37共-19),組合は課税されず、投資家は不動産所得として、確定申告が必要です。なお、組合契約を締結している組合員に該当する個人が、組合事業から生ずる不動産所得の損失がある場合、不動産所得の計算及び損益通算その他所得税に関する法令の適用について、その損失の金額は生じなかったものとみなされます (措法41の4の2①②)ので、この点注意が必要です。 ② インボイス制度(消費税) 対象不動産がオフィスビルである場合、賃料には消費税が課税されます。パススルー課税においては、賃料収入は、消費税を含んだところで投資家に帰属することとなります。消費税のインボイス制度において、投資家が適格請求書発行事業者の登録を行っていない場合、オフィスビルの賃借人は消費税の仕入税額控除が適用できなくなることから、投資家は免税事業者である場合であっても、適格請求書発行事業者の登録を行わなければならない場面が生じ、消費税の確定申告が必要となります。 ③ 相続開始時(相続税) 任意組合型の不動産小口化商品については、相続税を計算する際の不動産の評価に当たり、評価方法の定めがないことから、財産評価基本通達に定める評価方法に準じて評価します (評基通5)。不動産の所有権は直接組合員である投資家に帰属することを考慮すると、土地・家屋について、財産評価基本通達の路線価方式及び固定資産税評価額によって評価し、一定の要件を満たす場合は、小規模宅地等の特例を適用することが可能です。 なお、不動産小口化商品の対象不動産が一定の区分所有マンションである場合は、上記の財産評価基本通達による評価額に区分所有補正率を乗じて算出することとなります。 また、財産評価基本通達は「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」(評基通6)と定めていることから、税務当局が、不動産の時価(売買実例価額)と評価額に著しい乖離があるなど課税上弊害があると判断した場合には、時価によって是正されるリスクがあります。さらに、通達改正により、節税効果が減少するリスクもあります。 ④ 運用終了後は対象不動産を売却(所得税) 組合は、原則として対象不動産を売却することにより解散します。あらかじめ定められた組合期間内に、不動産特定共同事業者が市況を勘案しつつ対象不動産の売却の検討を行います。対象不動産の売却によって得られた代金を、投資家の出資持分によって分配し組合は解散します。 投資家が解散によって分配を受けた利益は、譲渡所得課税の対象となります。

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エンディングノート等を活用した相続税対策

公開:2025/12/12

高齢化社会,相続(争族)対策、認知症対策、おひとり様の増加などの観点から、エンディングノートやライフノートが注目されています。 日本財団によると、「既に公正証書遺言書を作成している」は1.5%,「既に自筆証書遺言書を作成している」は2.0%で、遺言書作成済みの人は全体の3.5%となっています。「近いうちに作成しようと思っている」の12.2%、「エンディングノートは作成した」の4.5%を加えると、全体の20%が作成・作成予定という結果になっています。そして、このうち、遺言書作成済みの人の3.5%を上回る4.5%の人がエンディングノートを作成 したということです。 エンディングノートとは、自分自身に何かあったときに備えて、ご家族が様々な判断や手続を進める際に必要な情報を残すためのノートです。また、ライフノートとは、これからの人生をさらに充実させるためのノートです。これらのノートは、生活の備忘録として、そして、これまでの人生を振り返り、これからの人生を考えるきっかけ作りにするものです。 さらに、事業承継に特化した「バトンタッチノート」と呼ばれるものなど多種市販されています。 これらのノートは、記載する内容に法的制約がないため、書き手は自身に適したノートを選んで書きたいことを綴ることができます。よって、「認知症対策」,「孤独死対策」,「空き家対策」などの観点から自治体が企画・作成したエンディングノートを無料配付するケースも多数あります。 エンディングノートには、「家系図」のほか「不動産」,「金融資産」,「借入金」など資産・負債の状況、「家族に対する想い」、「自身の相続開始後の財産等の承継」などを記載する項目が設けられていることから、これらの項目を確認することによって、顧客の人柄やこれまでの生き方、財産を次代にどのように承継していきたいのかを容易に把握することができます。 そして、家族状況、財産の状況から具体的な相続税対策を検討することが可能となります。検討の過程において、顧客に対して遺言書の作成を促す場面も多々あることでしょう。 相続税対策の入り口、遺言書の準備段階を形作るものとしての機能もあり、エンディングノートやライフノートを活用することで、効果的な相続税対策を企画することが可能になると思料します。

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相続放棄と遺産分割協議

公開:2025/12/12

事業経営を行っていた夫が亡くなりました。相続人は配偶者である 私と長男の2人です。長男に事業を継がせるため、私は死亡保険金300万円を受け取り、相続放棄をしようと思います。相続財産は夫名義の居宅、事業用資産,金融資産のほか銀行借入があります。 A: 相続の放棄には、家庭裁判所に申立てをする相続放棄と、法的手続を経ずに実際には遺産を相続しない事実上の相続放棄があります。銀行借入を一切引き継ぎたくない場合は家庭裁判所に申立てをする相続放棄をする必要があります。相続税の計算における生命保険金の非課税の適用を受けようとする場合は、事実上の相続放棄により自身は財産を取得しないこととする遺産分割協議を行うとよいでしょう。 解説 「相続放棄」という言葉は、民法上の相続放棄と事実上の相続放棄の2通りの意味で用いられることがあります。 (1) 民法上の相続放棄 民法上の相続放棄とは、亡くなった人の遺産について相続人としての地位を放棄することをいいます。法律用語として「相続放棄」という場合には、正式には、民法上の相続放棄を指します。相続放棄をするには、相続の開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述書を提出する方法により行わなければなりません(民法915,938)。 相続放棄をすると、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続しません。 相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったことになります(民法939)。そのため、遺産分割協議に参加する必要はありません。また、代襲相続も認められません。さらに、先の順位の相続人の全員が相続放棄をした場合は、次の順位の相続人に遺産相続の権利が引き継がれます。つまり、被相続人に多額の借入金があり、子の全員が相続放棄を行えば、放棄をした相続人である子に債務が及ぶことはありませんが、第2順位の被相続人の直系尊属が相続人になり、この直系尊属がいないか、相続放棄をすると、第3順位の兄弟姉妹に引き継がれることになります。 なお、一度相続放棄の手続をすると、撤回はできません (民法9191)。 (2) 事実上の相続放棄 事実上の相続放棄とは、上記(1)の法律上の手続による相続放棄を行うことなく、実際には相続財産を取得しないことをいいます。 遺産分割協議は、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質,各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」(民法906) ことから、諸般の事情を考慮して法定相続分があるにもかかわらず、一切の財産を取得しない協議をすることができます。このため、遺産分割協議の際に、他の相続人に財産を取得しない旨を伝え、自身の相続分をゼロとする遺産分割協議書を作成します。一般的には、これを事実上の相続放棄といいます。 なお、登記実務においては、相続人が生前に被相続人から特別受益を受けており、法定相続分を上回っているものとして、特別受益者の相続分が実質的にないことを特別受益者自身が認め、署名・捺印した「相続分がない旨の証明書(相続分のないことの証明書)」を作成し、この証明書に印鑑証明書を添付して、他の相続人への単独相続登記申請などの相続手続をすることも行われています。しかし、後日、真に財産を取得しない意思であったものか、登記手続の便法にすぎなかったのか、争われることがあります。 そのほか、自己の相続分を他の相続人に譲渡することでも同様の目的を達することができます(後記39参照)。共同相続人間の相続分の譲渡は、実質的に相続分の割合の変更ですから、自身の相続分を譲渡した相続人は、相続財産を取得することがなくなり、その相続分を譲り受けた相続人の相続割合が増加します。 なお、相続分を譲渡した人の相続 (譲渡人が被相続人となる相続)において、譲受人が譲渡人の相続人である場合、この無償譲渡は特別受益となる生前贈与に当たり得るとされています。 (3) 事実上の相続放棄のメリットとデメリット ① メリット 遺産分割協議書による事実上の相続放棄は相続人間の合意で成立しますので、家庭裁判所での法的な手続は不要です。また、民法上の相続放棄は相続開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申し立てなければなりませんが、事実上の相続放棄に期限はありません。 また、上記(1)のとおり、民法上の相続放棄を行うと、次順位の相続人が法定相続人となることがありますが、事実上の相続放棄ではそのようなことはありません。 ② デメリット 民法上の相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産(債務)も承継しませんが、被相続人に借入金などの債務がある場合、事実上の相続放棄をしても、債権者には対抗できません。民法上の相続放棄を行わない限り、法的には相続人の地位にあるためです。 なお、事実上の相続放棄は、遺産分割協議を行ったものですから、「相続の単純承認」事由に該当しますので、事実上の相続放棄を行った後に民法上の相続放棄はできません。 (4) 課税上の留意点等 相続税法上,「相続人」という場合は、相続を放棄した人及び相続権を失った人を含みません(相法3①)。したがって、相続を放棄した人及び相続権を失った人が取得した保険金については、非課税の適用を受けることはできません(相法12①五)。ここでいう相続を放棄した人とは、民法上の相続放棄(家庭裁判所に申述書を提出して相続を放棄するもの)を行った人をいい、事実上の相続放棄を行った人を含みません。 一方、相続人は、民法上の相続放棄と事実上の相続放棄にかかわらず、放棄をした相続人を含む相続人の数に応じた非課税枠の金額や基礎控除額を利用することができます(相法12①五、15②)。この非課税枠の金額や基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)は、相続放棄がなかったものとして考えますので、相続税の総額は変わりません。また、配偶者が相続放棄をしても、配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けることはできます(相基通19の2-3)。 (5) 本事例における相続放棄 民法上の相続放棄又は事実上の相続放棄にかかわらず、基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×2人)です。また、配偶者に対する相続税額の軽減を使うこともできます。民法上の相続放棄を行うと、生命保険金等の非課税枠が利用できないことから、借入金の有無・多寡及び誰がその借入金を負担するのか等を検討の上、民法上の相続放棄をするのか、事実上の相続放棄をするのか決定するとよいでしょう。

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相続放棄と相続分0円での譲渡の違い

公開:2025/12/12

夫が亡くなりましたが、私は遺産を相続するつもりはありません。知人から、相続放棄をしても相続分を0円で子供に譲渡しても同じであり、相続分を譲渡するのであれば、家庭裁判所への申述は不要と聞きました。 A: 相続分の譲渡は譲渡人と譲受人の合意があれば成立しますが、家庭裁判所に申述が必要な相続放棄と異なる手続であり、法的効果も異なります。 相続分の譲渡人は相続人としての立場がなくなるわけではありませんので、相続分の譲渡をもって被相続人の債権者に対抗できないことなどに留意が必要です。 解説… (1) 相続分の譲渡 相続分の譲渡とは、自身の相続分 (地位)を他の人に譲り渡すことです。民法は、「遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したとき」(民法905①)と規定し、相続分の譲渡を想定しています。具体的には、遺産分割をする前に被相続人の相続財産に対する持分割合そのものを「他の相続人(共同相続人)」や相続人以外の「第三者」に売却あるいは贈与することを相続分の譲渡といいます。 相続分の譲渡をするに当たって、他の相続人の同意は不要となるため、譲渡人と譲受人の合意のみで相続分の譲渡は成立します。相続分の譲渡には、特別な手続は不要で、法律的には「口頭の合意」でも成立します。ただ、口頭では相続分の譲渡があった事実を証明できず、トラブルになる可能性があるので、通常は、「相続分譲渡証明書」などを作成します。 相続分の譲渡は、相続分の全部のみならず、一部譲渡をすることも可能です。あくまで相続分の譲渡であるため、特定の財産を指定した一部譲渡はできません。また、譲渡は有償でも無償でも構いません。 実務上、相続分の譲渡は、第三者に対する譲渡は稀で、他の相続人に譲渡するケースがほとんどです。遺産を承継する意思がなく、遺産分割協議から脱退するために無償で譲渡する場合や、相続人の数が多く全員での協議が困難であることから、協議当事者を減らすために、他の相続人に相続分を譲渡する(協議に参加する当事者が譲り受ける) 場合などがあります。 (2) 相続分の譲渡と相続放棄の違い 相続分の譲渡は、その相続人が相続人の地位にあることを前提に、「相続分」を他の相続人や第三者に譲るため、相続人としての立場が変わるわけではありません。一方、相続放棄は、その相続人の「相続権そのもの」を放棄するため、相続人でなくなります。 相続分の譲渡をしても、相続人であることに変化はないため、被相続人に借金など債務があった場合、債権者から返還請求されたときには、それに応じなければなりません。これは、相続分の譲渡のデメリットといえます。一方、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出して受理されれば相続人ではなくなるため、債権者からの返還請求に応じる必要はありません。 また、相続分の譲渡の場合、相続分を譲渡する側の相続人が、「誰」に相続分を譲渡するかを決めることが可能です。相続分を無償でも有償でも譲渡することができます。しかし、相続放棄の場合は、最初から相続人ではなかったことになります。そのため、これを前提に民法の規定により他の相続人の相続分が定まることになり、自分の望む相続人 (のみ)の相続分が増加するとは限りません。 (3) 相続分の譲渡に係る課税関係 ① 他の相続人に無償譲渡した場合 譲受人は、「譲受人の本来の相続分+譲渡された相続分」が、相続税の課税対象となります。この場合、無償譲渡であっても遺産分割協議の一部であると解されるため、譲受人に贈与税は課税されません。 譲渡人は、相続分をすべて譲渡すれば税金は一切かからず、一部譲渡をした場合は「譲渡しなかった相続分」が相続税の課税対象となります。 ② 他の相続人に有償譲渡した場合 譲受人は、対価として有償額を支払うため、「譲受人の本来の相続分+譲渡された相続分と有償額の差額」が相続税の課税対象となります。 譲渡人は、「有償金額」が、相続税の課税対象となり、代償分割と同じ扱い(後記41参照)となります。 また、相続分の譲受人が不動産などを譲渡対価として権利を移転した場合には、相続分の譲受人(不動産の譲渡人)に譲渡所得税の負担が生じることがあります。 ③ 第三者に無償譲渡した場合 譲受人は、対価として有償金を支払っていないため、「譲渡された相続分」が贈与税の課税対象となります。 譲渡人は、相続分の譲渡をしても相続人の地位は残るため、第三者に譲渡した相続分に係る相続税の負担が残ります。 ④ 第三者に有償譲渡した場合 原則として、譲受人に税金はかかりませんが、有償額が著しく低額なケースであれば贈与税が課税される可能性があります。 譲渡人は、相続分の譲渡をしても相続人であることに変わりはないため、第三者に譲渡した相続分に係る相続税の負担が残ります。また、遺産である不動産などの譲渡対価について譲渡所得税の負担が生じることがあります。 ⑤ 第三者が法人である場合 有償又は無償を問わず、譲渡人は相続税の負担が残るだけでなく、遺産である不動産などの譲渡対価について譲渡所得税の負担が生じることがあります(所法59)(前記16 (2)②参照)。また、譲受人である法人において、譲り受けた財産の時価と対価の差額について法人税の課税対象となります(前記16(2)①参照)。 (4) 他の相続人へ相続分の譲渡を行うときの留意点 共同相続人間でされた無償の相続分の譲渡は、その相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、この譲渡をした人の相続(譲渡人が被相続人となる相続)において、譲受人が相続人であった場合には、特別受益に該当する生前贈与に当たるとされています。 このため、他の相続人に相続分の無償譲渡をすると、その譲渡した相続分は、将来、譲渡人が被相続人となる相続において遺産分割で考慮されたり、遺留分侵害額請求の対象になる可能性があります。 (5) 第三者へ相続分の譲渡を行うときの留意点 第三者に相続分の譲渡を行った場合、他の相続人が「相続分の取戻権」を行使すれば、他の相続人は譲渡された相続分を取り戻すことができます(民法905①②)。相続分の取戻権は第三者に対して相続分の譲渡があった時から1か月以内に行使をする必要があり、その第三者に対しては対価を支払う必要があります。 第三者に相続分が譲渡された場合には、その第三者が遺産分割協議に参加する権利を得ますので、遺産分割協議がまとまりにくくなる可能性が高まります。 5 最判平成30年10月19日(民集72巻5号900頁)(前記38注3参照)

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遺産分割協議の種類と留意点

公開:2025/12/12

父が亡くなりました。遺産は自宅とアパート1棟とわずかな現預金です。相続人は私を含めて兄弟3人ですが、どのように遺産を分ければよいでしょうか。 A: 法定相続人が複数人いる場合、相続財産はそれぞれの法定相続分による共有(共同相続) 状態となります。共有状態となった相続財産を相続人間の協議によって分割し、財産を相続する人を決めることによって、各相続人が自由に処分できるようになります。各相続人の法定相続分と異なる割合での遺産分割も可能です。 遺産分割には、現物分割,代償分割,換価分割及び共有分割の方法がありま す。それぞれの分割方法のメリット・デメリットを踏まえて、最善の分割方法を選択します。 解説… (1) 現物分割 現物分割とは、現物の遺産をそのまま分け合う分割方法をいいます。現物の遺産の価値がそれぞれ異なっていても、相続人全員の同意があれば現物分割ができます。 例えば、複数の不動産が遺産としてある場合に、相続人Aは甲土地,相続人Bは乙土地、相続人Cは丙土地といった具合に、各相続人がそれぞれ不動産を取得する場合や、大きな1筆の土地を相続人の数だけ分筆して、分筆後の各不動産を各相続人が取得する場合などです。 遺産分割とは、「遺産」を相続人間で「分割」するものですので、遺産の分割方法としては、現物分割が原則的な方法であり、相続人間にとってもわかりやすいといえます。 もっとも、土地を分筆するためには時間と費用がかかるばかりか、分筆後の面積では建物を建てられなくなってしまい、分筆により不動産としての資産価値を毀損してしまう場合があり、現物分割を選択すべきではないケースもあります。また、建物の場合、特に戸建住宅のような建物については、そもそも物理的に分けることができません。 遺産の大半が現預金である場合、遺産の種類が多く現物でも公平に分割できる場合、すべての相続人が現物分割について納得している場合など、遺産分割をスムーズに終わらせたいときは、現物分割を選択するとよいでしょう。 実務上は、代償金の支払(代償分割)を併用する場合が多くあります。 (2) 代償分割 代償分割とは、特定の相続人が遺産を現物のまま相続して、代わりに他の相続人に自己の現金その他の固有財産を与える分割方法をいいます(後記41参照)。 代償分割のメリットとしては、複数の相続人間で平等に遺産分割を行えること、不動産などの遺産を売却せずにそのまま相続できること、共有分割によるデメリットを避けられることが挙げられます。また、相続税の計算において、各種特例や控除の要件を満たす相続人が代償分割を選択して財産を取得することで、結果として相続人全員に課税される相続税の負担軽減につながるというメリットもあります。 なお、代償金は相続税の課税対象となる財産ですので、受け取った相続人に贈与税や所得税は課税されません。代償金を支払った人の課税価格の合計は代償金を差し引いた金額となります。 代償分割は、不動産の現物分割が難しい場合の分割方法として有用であり、実務でも非常に多く採用される分割方法です。 もっとも、取得者には代償金の原資を確保する負担が生じることと、代償金は、遺産の相続税評価額によって定めるものではなく時価を基準として定めることになることから、不動産を取得する側と取得しない側で、不動産の評価額に対するインセンティブが異なります (例えば、取得者側は不動産を低く評価したいと考える一方で、非取得者側は不動産を高く評価したいと考える。)。そのため、不動産の評価をめぐって非常に紛争になりやすく、協議がまとまらない場合がある(調停、審判に進まざるを得ない)という難点があります。 また、代償分割の場合の代償財産の価額の計算においては、相続人間で代償財産の価額としての評価を合意していない場合には、時価と相続税評価額の調整計算を行うことが必要となります(相基通11の2-10)。 そのほか、代償金ではなく、代償財産(別の場所の土地など)を交付する場合には、代償財産を交付する相続人に譲渡所得税が発生する可能性がありますので、注意が必要です (後記41参照)。 (3) 換価分割 換価分割とは、現物の遺産を売却して金銭に換えて、その金銭を相続人間で分割する方法をいいます(後記56参照)。 換価分割は、対象となる現物を高く買ってもらえれば相続人全員にとって利益となる一方、安く買い叩かれればその不利益は相続人全員に帰するというように、相続人全員にとってフェアな分け方です。そのため、遺産の評価をめぐる紛争はほとんど生じませんし、相続税の納税資金の捻出もできる方法といえます。 一方、相続税の納税資金捻出のための売り急ぎにより希望額で売却できない可能性があること、売却関連費用(仲介手数料,測量費用など)がかかることがデメリットとして挙げられます。また、実際に特定の相続人が不動産を占有使用している場合、その相続人は出ていくことが前提となるため、そのようなケースではなかなか採用しづらい分割方法といえます。 課税上、売却益には譲渡所得税が課される可能性があることもデメリットの一つといえます(後記56参照)。 そのほか、換価代金を分割対象財産とすることを明確に合意しないまま換価してしまうと、換価代金が遺産分割の対象となるのか否かの争いが生じるおそれがあります。 最高裁昭和52年9月19日判決は、「共同相続人が全員の合意によって遺産分割前に遺産を構成する特定不動産を第三者に売却したときは、その不動産は遺産分割の対象から逸出し、各相続人は第三者に対し持分に応じた代金債権を取得し、これを個々に請求することができる」と判断しました。もっとも、売却代金を一括して共同相続人の1人に保管させて遺産分割の対象に含めるなどの合意をすること自体は否定していません(最判昭和54年2月22日7)。 以上によれば、換価する際に遺産分割の対象とすることを合意しておかなければ、換価代金は遺産ではなく、各自に相続分に従って帰属するのではないかとの争いを生む可能性がありますので注意を要します。 (4) 共有分割 共有分割とは、遺産を相続人間で共有するという内容で分割する方法をいいます。分割方法がなかなか決まらない場合や、いずれ時期をみて共同売却することに合意する場合などに選択される方法です。 共有分割は、具体的相続分の割合で不動産を共有とするものなので、相続人間に不公平が生じることはありません。 もっとも、共有分割の結果、遺産共有 (暫定的な共有関係)から物権共有(確定的な共有関係)に移行しますが、共有不動産として管理・処分するためには共有者間での話し合いが必要となり、意見が一致しない場合にはトラブルになる場合があります。共有状態の解消を図るためには、共有物分割の手続を経る必要がありますので、相続人間に強い希望があり、共有としておくべき事情が認められるなどの事情がない限り、なるべく避けるべき分割方法といえます。 (5) 検討順序 まず、最初に検討すべきは、①現物分割です。現物分割は、遺産を現物で分割するものであり、原則的な分割方法といえますので、最初に検討されるべき分割方法となります。もっとも、不動産では、現物分割ができない、あるいはすべきではないケースが多々あります。 そこで、次に検討されるべきは、②代償分割です。代償分割もまた、現物分割と同様、不動産の性質や形状を変更せずに分割するものですので、優先して考えられるべき分割方法となります。しかし、代償金の原資確保や、評価額をめぐる紛争が生じやすいという難点があります。 現物分割も代償分割も難しいというケースで検討されるべきは、③換価分割です。換価分割は、不動産を売って分けるので、相続人間にとっては最もフェアな分割方法といえます。 ただし、特定の相続人が住んでいる場合など、実際には換価することが難しいケースにおいて、最終手段として検討されるのが、④共有分割です。共有分割は、具体的相続分で不動産を共有するもので、不動産の評価額は問題にならず、換価の手間もなく、遺産分割段階では最も波風が立たない分割方法といえます。しかし、確定的な共有関係に移行してしまうので、共有分割後においてトラブルに発展する可能性が残る選択肢といえます。 本事例においても、上記法的効果や課税関係を踏まえて分割方法を検討するとよいでしょう。 《遺産分割の検討順序》 ① 現物分割・・・・・遺産の形状や性質を変えず現物で分割する ② 代償分割……………… 特定の相続人が多くの遺産を相続し、他の相続人に代償金を支払う ③ 換価分割・・・・・遺産を換価し、その代金を分割する ④ 共有分割……・・・・遺産を相続人の共有状態とする

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代償分割

公開:2025/12/12

父の相続財産は同族会社の株式がほとんどです。この株式は私が相続し、妹には代償金を支払いたいと考えています。 A: 代償分割をした場合には、相続税の課税価格の計算において、一定の調整計算が必要となる可能性があります。 解説 (1) 代償分割をした場合の相続税の課税価格 代償分割をした場合の、相続税の課税価格の計算は、それぞれ次のとおりです(相基通11の2-9)。 ① 代償財産の交付を受けた人 相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額と交付を受けた代償財産の価額との合計額 ② 代償財産の交付をした人 相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額から交付をした代償財産の価額を控除した金額 なお、代償財産の交付により、交付した人の相続税の課税価格がマイナスになる場合には、相続税の計算上不利となるため、留意が必要です。 (2) 代償財産の価額 代償財産の価額は、代償分割の対象となった財産を現物で取得した人が、他の共同相続人又は包括受遺者に対して負担した債務 (代償債務)の額の相続開始の時における金額によります。 ただし、次の場合には、代償財産の価額はそれぞれ次のとおりとなります (相基通11の2-10)。 ① 代償分割の対象となった財産が特定され、かつ、その財産の代償分割の時における通常の取引価額をもととして代償債務の額が決定されているとき 次の算式により計算した金額 代償債務の額 × 代償分割の対象となった財産の相続開始の時における相続税評価額/代償債務の額の決定のもととなった代償分割の対象となった財産の代償分割の時における価額 ② 共同相続人及び包括受遺者の全員の協議に基づいて代償財産の額を①の算式に準じて又は合理的と認められる方法によって計算して申告があった場合 その申告があった金額 【事例】 相続人甲は、相続により土地 (相続税評価額4,000万円,代償分割時の時価5,000万円)を取得する代わりに、相続人乙に対し現金2,000万円を支払いました。 ① 甲の課税価格:4,000万円-2,000万円=2,000万円 ② 乙の課税価格:2,000万円 ただし、代償財産(現金2,000万円)の額が、相続財産である土地の代償分割時の時価5,000万円をもとに決定された場合には、甲及び乙の課税価格はそれぞれ次のように計算します。 ① 甲の課税価格:4,000万円-2,000万円×(4,000万円 5,000万円)=2,400万円 ② 乙の課税価格:2,000万円× (4,000万円 5,000万円) =1,600万円 (3) 代償財産として相続人固有の資産を交付した場合 代償債務の履行として固有資産の移転があったときは、その履行をした人はその履行をした時において、その資産を譲渡したこととなります(所基通33-1の5)。この場合、代償債務の履行をした人について、所得税が課される可能性があります。

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遺産分割のやり直し

公開:2025/12/12

Q: 母が亡くなり、このたび、長女の私、次女、弟の3人で遺産分割協議を行い相続税の申告を済ませました。ところが、申告が済んでから、弟が取り分が少ないと主張し、遺産分割のやり直しを行うことにしました。遺産分割のやり直しは可能でしょうか。また、やり直す場合に、税務上何か影響はありますか。 A: 遺産分割のやり直しは可能です。ただし、税務上は、遺産分割のやり直しを行った場合には、その財産を分割により取得したとは認められません。 本事例では、既に相続税の申告を済ませているということですから、その申告内容と異なる分割をやり直す場合には、贈与税や譲渡所得税が課される可能性があります。 解説… (1) 相続税法における「分割」の意義 相続税法における「分割」とは、相続開始後において相続又は包括遺贈により取得した財産を現実に共同相続人又は包括受遺者に分属させることをいい、その分割の方法が現物分割、代償分割,換価分割又は共有分割であるか、またその分割の手続が協議、調停若しくは審判による分割であるかを問いません。ただし、当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、分割により取得したものとはなりません(相基通19の2-8)。 そのため、一度遺産分割協議を行った後に、遺産分割のやり直しにより取得した財産は、相続により取得したものとはならず、分割により取得した者から、贈与や交換により取得したものと解されることとなります。 (2) 遺産分割協議の合意解除 一方,最高裁平成2年9月27日判決では、「共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではなく、上告人が主張する遺産分割協議の修正も、右のような共同相続人全員による遺産分割協議の合意解除と再分割協議を指すものと解される」として、合意解除10による遺産分割協議のやり直しが可能であることを認めています。 このように、私法上の法律関係として遺産分割協議の合意解除は認められていますが、合意解除によっては過去の相続税申告を修正することはできず(やや事案が特殊ですが、大阪高判平成27年3月6日11),むしろ、税務上は贈与や交換を行ったものと取り扱われることから、贈与税や譲渡所得税が課税される可能性があります。

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遺産分割協議中の二次相続

公開:2025/12/12

Q: 父が亡くなり、相続人である母(配偶者)と長女の私の2人で相続税の申告の準備を進めていたところ、申告期限を待たずして母も亡くなりました。遺産分割も済んでいません。 A: 相続人が遺産分割協議の前に死亡した場合には、その死亡した人の相続人が代わりに遺産分割協議に参加することとなりますが、本事例では、もしお母様(配偶者)の相続人があなた (長女)のみである場合には、存命の相続人が1名のみであることから、もはや遺産分割協議を行う余地はなく、お父様の相続については未分割として相続税申告を行います。 解説 (1) 相続税の申告手続への影響 相続税申告書を提出すべき人が、その申告書を提出しないで死亡した場合には、その人の相続人は、その相続開始を知った日の翌日から10か月以内に、その死亡した人の申告書を提出する必要があります(相法27②)。 相続人がその死亡した人の申告義務を承継し、一次相続 (本件父の相続)の相続税申告を行うこととなりますが、その申告期限は二次相続(本件母の相続)から10か月以内です。しかし、一次相続における母の申告期限が延びるのみであり、他の相続人の申告期限は延びませんから、共同相続人全員で一つの相続税申告書を提出する場合には、一次相続の元々の申告期限までに申告を行わなければなりません。 (2) 協議中に二次相続が発生した場合の配偶者に対する相続税額の軽減の適用可否 協議中に相続人である配偶者が死亡して二次相続が発生した場合において、一次相続により取得した財産の全部又は一部が、一次相続に係る配偶者以外の共同相続人又は包括受遺者及びその配偶者の死亡に基づく相続に係る共同相続人又は包括受遺者によって分割され、その分割によりその配偶者の取得した財産として確定されたものがあるときは、配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けることが可能です(相基通19の2-5)。また、分割協議により確定した分割内容をもって、一次相続の相続税申告を行うこととなります。 二次相続における相続税申告上は、分割により配偶者が取得した財産として確定された財産の価額を、配偶者固有の財産の価額に加算し、二次相続の相続税額を計算します。 (3) 配偶者の死亡により共同相続人が1名のみとなった場合 一次相続が未分割のまま、共同相続人の死亡により、存命の相続人が1名のみとなった場合には、1人で遺産分割協議を行う余地はなく、一次相続については、未分割であるものとして相続税申告を行うこととなります。配偶者に対する相続税額の軽減の適用はなく、法定相続分で財産を取得したものとして(相法55),申告します。なお、遺産分割協議は口頭でも成立するため、遺産分割協議書の作成はしていなかったものの、二次相続の発生前に口頭で遺産分割協議が成立していたような場合には、「遺産分割協議証明書」を作成することにより、その分割内容に基づく相続手続が可能であると考えます。 二次相続における相続税申告上は、一次相続における配偶者の法定相続分によって計算した財産の価額を配偶者固有の財産の価額に加算し、二次相続の相続税額を計算します。この場合、配偶者に対する相続税額の軽減の適用がないことから、相続税の納付が生じる可能性がありますが、この納税については、二次相続における相続税申告上、債務控除及び相次相続控除の適用があることに留意します。

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遺留分侵害額請求で金銭を支払った場合

公開:2025/12/12

Q:相続人は長女の私、次女、弟の3人です。相続財産は、遺言書に基づき、私と次女が相続し、相続税の申告手続を終了したところ、このほど、弟から遺留分侵害額請求の通知がありました。相続財産は不動産がほとんどで、金融資産はわずかです。 A: 遺留分侵害額の請求 (民法1046) に基づき金銭を支払った場合には、その事由が生じた日の翌日から4か月以内に限り、更正の請求を行い、相続税額の還付を受けることが可能です。一方、遺留分に相当する金銭を受け取る弟様は、修正申告を行うことができます。 解説 遺留分侵害額の請求については、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間は行使することができる(民法1048)とされていることから、本事例のように相続税の申告後、遺留分侵害額請求を受け遺留分の回復が行われることがあります(遺留分侵害額の計算は前記37(6)参照)。 この場合、遺留分侵害額の請求を受けて負担した人とその支払を受けた人との間で、当初申告に対して更正の請求及び修正申告の調整が必要となります。 (1) 遺留分算定のもととなる資産の評価 遺留分算定に際し、例えば相続財産の中に不動産や非上場株式がある場合,その資産をどのように評価するかが争いになることが多々あります。遺留分算定の際には、例えば不動産は売却査定額や鑑定評価額等,非上場株式はバリュエーション(後記53参照)を利用することもありますが、相続税申告に使用する評価額は、財産評価基本通達に基づき計算した相続税評価額ですので、時価とは異なる点に留意が必要です。 (2) 更正の請求 相続税の申告書を提出した人は、遺留分侵害額請求に基づき支払うべき金銭の額が確定し、その事由により当初の申告に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、その事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内に限り、更正の請求を行うことができます(相法32①三)。遺留分に相当する金銭を支払うことで、侵害側の相続税の課税価格は減少しますから、更正の請求により、過大となった相続税額の還付を受けることが可能です(前記6(3)参照)。 (3) 修正申告 相続税の申告書を提出した人は、遺留分侵害額請求に基づき支払うべき金銭の額が確定し、その事由により当初の申告に係る相続税額に不足を生じたときは、修正申告を行うことができます(相法31①)。遺留分に相当する金銭を受け取ることで、侵害された側の相続税の課税価格は増加しますから、修正申告により、不足した相続税額を納付することが可能です。 なお、この修正申告は、「(・・・・・・・) 修正申告書を提出することができる。」(相法31①)旨の文言になっており、任意的修正申告という位置付けとなっています。とはいえ、遺留分を支払った側が更正の請求を行い相続税額の還付を受ける場合には、遺留分を受け取った側も修正申告をしなければ、税務署としては同じ相続において納付されるべき全体の相続税額が不足することになりますので、更正を行うと考えられます。 しかし、当事者がいずれも、更正の請求を行わず修正申告も行わないということであれば、当事者間での納付すべき相続税額の相殺をもって、その手続に代えることも選択肢の一つとして考えられます。 (4) 期限後申告 遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定し、その事由により新たに申告書を提出すべき要件に該当することとなった人は、期限後申告を行うことができます(相法30①)。その場合の取扱いは、修正申告と同様です。 (5) 修正申告及び期限後申告に係る附帯税の取扱い 申告期限を超えて修正申告等を行った場合、過少申告加算税や延滞税などの附帯税が課されることがあります (後記69(2)参照)。しかし、遺留分侵害額請求に伴い、申告書を提出する場合の附帯税の取扱いは、以下のとおりとされています。 ① 過少申告加算税又は無申告加算税 遺留分侵害額請求により受け取る金額は、当然、当初申告時には申告することができないものです。そのため、期限内申告においてその受け取る金額を加味することができないのは、正当な理由に基づくものであるため、過少申告加算税や無申告加算税は課されないこととされています(通法65⑤一,661)。 ② 延滞税 期限内申告に係る納期限の翌日から修正申告書又は期限後申告書の提出があった日までの期間については、延滞税の計算期間から除外されることとされています(相法51②一八)。 (6) 本事例における課税上の留意点 ① 相続税の課税価格の計算 遺贈が遺留分を侵害するものとして遺留分侵害額の支払の請求が行われた場合において、その金額が確定したときの相続税の課税価格の計算は、次のとおりです。 イ 金銭の支払を受ける相続人(遺留分権利者) 相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額と遺留分侵害額に相当する価額との合計額 ロ 金銭を支払う受遺者 (遺留分義務者) 相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額から遺留分侵害額に相当する価額を控除した金額 なお、この場合の「遺留分侵害額に相当する価額」は、相続開始の時における時価であることを要しますが(相法22),その金額については、代償分割が行われた場合(相基通11の2-10)に準じて計算することとして差し支えありません(前記41参照)。 ② 時価が相続税評価額を上回る場合の調整計算の例 ・長女が遺贈により取得した財産:土地(相続税評価額4,000万円,遺留分侵害額の支払の金額が確定した際の時価5,000万円) ・遺留分侵害額に相当する価額:2,000万円 ・遺留分侵害額に相当する価額2,000万円は、相続財産である土地の遺留分侵害額の支払の金額が確定した際の時価5,000万円をもとに決定されている。 イ 長女の課税価格 4,000万円-2,000万円× (4,000万円 5,000万円)=2,400万円 ロ 弟の課税価格 2,000万円× (4,000万円 5,000万円) =1,600万円 また、遺留分侵害額に相当する金銭の支払に代えて、所有している土地を移転させることにより遺留分侵害額を消滅させた場合、代物弁済に該当し、譲渡所得課税が行われます。

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